腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「セッション」

話題だったので、見てみました。
わりと音楽ものの映画が好きな私です。「シャイン」とか、わざわざ都内まで出てみたら、そのあと地元で上映してくれたっていう_| ̄|○。「シャコンヌ」とか観念的でちょっとヘビーだわってやつもありますが、「アマデウス」とか「ベートーベン 不滅の愛」みたいに、エンタメで楽しいやつもあるよね。あの有名なあの人にそんな逸話が……? 的な楽しさももちろんですが、やっぱ音楽がサ! 本人のを使うんだもん、すばらしいにきまってるよね! それだけでも損しないよね! という感じで、感動の涙を流す前提だよ音楽もの……と思って見たら、絶対ダメな映画でした「セッション」。
か、感動の「カ」の字もなかった_| ̄|○。
むしろ、暴力的な内容だった_| ̄|○。
音楽版「フルメタル・ジャケット」とまで言ったら、まあ、言いすぎですけれども、ハート軍曹ほどの笑いももたらしてくれないよフレッチャー先生。
ただ、ただ、イヤなヤツだったよ最後まで。家庭教師のヨシモトだよ_| ̄|○。

……もうさ、この手の内容のやつ、本当にキラいなんですけど……と、フレッチャー先生が出てきた瞬間から不安な気持ちに襲われた私なんですが、こういう作品の常で、主人公がね、警戒もせずにのこのこ生贄の羊になりにいくわけですよ。ばか! 逃げろ! と何度画面の前で呟いたかしれません。がんばればがんばるほど、傷を深くするのがこの手のヤツを相手にしたときの常じゃないですか。いうても学校の先生ジャン、しかも音楽ジャン、なんて思ってると、大変な目に合います。体育会系とか通り越して、ただの鬼上等兵です。パワハラの生きた見本が目の前に! コワッ!
「アンブロークン」じゃないんだから、まさか命をとられるまではしないだろうなんて甘く見てたら、自殺しちゃう人まで出てきました。そりゃそうなんだよ、ああいあ精神的なゆさぶりって、ボディブローみたいに効いてくるんだよ、しかも、真面目にとりくんでしまった人ほど傷を深くするんだよなぁ、とほほ。

途中でちょっとした展開がありまして、ああよかった、これであの教師の魔の手から逃れられるのね、とほっとしたのもつかの間、主人公がさ、自分から教師のもとにもどっていくよ、そしてEDはじゃじゃん! 洗脳の完成でした。向こう側へ行っちゃいました。わー怖い。お父さん、切ない。「悪魔の嵐」的結末です。

ただ、最後まで見てみると、すこしはじめとは印象が変わりました。。。私は、純朴な音楽好き少年が、わるいオトナの思想に染まってひどい目に合う話だと途中までは思っていたんだが、彼がサ、あれだけの目に合いながら、自分から先生のライブを聞きに行って、さらに会話まで交わして、ノリノリでドラムを引き受けたときに「あ、このひと、もともと素養があったんだな」となり、そうして思い返してみると、彼の“偉大さ”に対するこだわりって、物語の最初からちゃんと描かれていたよな、と思いいたりました。「すべてを犠牲にしてでも、オレは世界に名を残す」というのが、もともと彼の音楽の動機だったんだ、となると、この先生は彼にぴったりでした_| ̄|○。な、なべぶたにとじぶた。

まあ、ね、目的は人それぞれですから、音楽を、人を癒したり、楽しませたりするために行うのでなく、他人を殴ったり貶めたり
するために使うんだという人がいても、しょうがないのかな、とは思いますが、私は好きになれないな。たとえば、フレッチャー先生の音楽なり、主人公の叩くドラムなりが、すべてを凌駕するほどの感動を与えてくれるのなら話はまた変わってくるんだが、私、あまりジャズがわからないのか、演奏のシーンとか、全然ピンとこなかったんですよね……。

ベートーベンも相当イヤなやつだった(映画のなかでは)ですが「不滅の愛」のなかで、「こんなに素晴らしい音楽を作る人を、きらいになれない」という台詞があって、見ていた私も本当にその通りだと思えたのは、やっぱりベートーベンの曲がスバラシイからで、「じゃあ、音楽と人間性はべつじゃん」と言われれば、それもそうなのかもしれないが、でもさ、主人公の奏でる音楽が、かわいい恋人に対する仕打ちを帳消しにするほどのものとは最後まで見ても思えなかったので、私がこの作品を好きになれないのは仕方ないなぁと。
まだ若いから、いまヘンな思想にカブれちゃってるから、とだいぶ差し引いて見守っていたけど、主人公が彼女にしたことって、ふつうにクズだからな。。。
そしてフレッチャー先生も、とにかく全てにわたってヒドいが、私が一番ひいたのは、生徒が事故で死んだ、といって、その音楽に涙して見せていたのが、実は、自分が自殺に追い込んでいた相手だった、というそのサイコパスっぷりです。わざとなのか、本当に己の脳内ではそういう物語にかわっちゃっているのか知らないが、邪悪! おまえのような邪悪な人間は幼い女の子とかに近づくんじゃない、と本気で思いました。
何回もバディ・リッチという人の話がでてくるが、シンバルを投げつけられたから彼は偉大になった、という、その理屈がそもそも納得がいかないんです。“なにがその人をそんな風にしたのか”ということを、一言でいいあらわしたりできるはずがない。それ、あんたの勝手な思い込みじゃん、て話なんで、それに納得する主人公にも、なぁ……共感できないのよね。
思うんですけど、あれ、男ばっかだったのもよくないんじゃないだろうか。ドラム叩いているのが女3人だったら、絶対練習の後で「ねえ、あの先生が言っていたテンポの話、わかる? 私、ほんというとなに言われてるのかわかんないんだけど……」「や、じつは私もよく……」みたいになって、「てか、あの先生、ちょっとオカシイよね……?」てなって、手を血だらけにするほどドラム叩く前に、もうすこしまともな大人に相談できたんじゃないの? と思うんだが、だめですかね?(笑) あれだけの非道を繰り返している人が、生徒の間で「あいつ マジ ヤバイ」って噂にならないんかな、とも思いました。「グリー」に出てくるみたいなまともな先生、いるハズじゃね? フレッチャー先生見たあとだと、私大好きスー先生はおかあさんのようにやさしい、と思いました(笑)

とまあ、考え始めると、設定はちょっと雑っていうか、奇妙な話ではあるんだが、洗脳の手口を描いた部分はすごくよくできていたので、これを見て、同じ罠にはまらないように気をつけるのにはいいかもしれないです。
あと、全体に無駄がなくてさくさくみれるし、緩急もうまいし、音楽のシーンとかスタイリッシュではあったので、映画としてはよくできている、の、か、も……こういう内容じゃなくて、アクションとかサスペンス、ホラーなら、アリな監督なのかもしれません。
ただな……なにしろはじめにみちゃったのがコレなので、私の中では監督の印象が悪くなりました。残念。