腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

イヴの時間

すごいよ、やったよ、私のために作ってくれたのかと思うほどツボにハマる作品でしたよ本当ありがとう。別のDVD作品で予告を見て「……これは、よさそう」と思って見てみたのですが、イエイ、ドンピシャリ。私、わりと映画の予告って真面目に見るほうなんですが、なぜなら予告で気に入ったものは、まあ、外れがないからなんですけど、今回は、そのなかでも期待以上でした。アニメスキーでテレビはまめにチェックしている私なんだが、アニメって、劇場版はどうしても子供向けが多くなるので、オトナでも楽しめるようなアニメ映画ってなかなか出合えないのですけど、収穫! 監督名前覚えるよ!
ストーリーは、近未来のアンドロイドと人間のコミュニケーションみたいなのがテーマなんですが、よくある人間対ロボットの全面戦争、とか、境界が曖昧になっていくがゆえの恐怖がメインのSFホラー、みたいな、話が劇的に展開するたぐいのものではなくて、まあ、わりとささやかな日常がテーマのヒューマンストーリーです。アクションなし。陰謀なし。影の黒幕。。。みたいなのはいないことはないけど、それもなんか、日常の範囲。舞台も、喫茶店か自宅か学校、と限定されているので、話に特別な広がりもなし。しかし、よかったよー。オチにちょっと泣けたよー。
この世界は、アンドロイドをちょっとバカにしているというか、アンドロイドに感情的にいれこむ人を依存症みたいに扱っていて、その見られ方がすこし前のヲタクに対する蔑視に近いものを感じさせます。基本にあるのは、「人間は、人間と愛し合うのが一番いい。それ以外のものにいれこむのは寂しいひとのすること」というような、まあわりと一般的な価値観です。自分のなかの限りある資源、時間やお金や愛情を、人間以外のモノ、たとえば、ペットや人形や、車のような機械モノに過剰に注ぎ込むのは、ちょっとヒカれるっていう、そういうの、ありますよね。それがたとえば職業とかに繋がってお金を生むようになると見方が変わるんだろうけど、そうじゃないと、ただの浪費、無駄、いきすぎた趣味になっちゃう。この作品のなかでは、アンドロイドと一緒の傘にはいっていても女子高生の失笑を買ってます。。。私、素直に、なんでやねん、と思ったがな。つか、本当に、アンドロイドをただのモノとしてみているなら、ああいう失笑はかえって買わないだろう、と思うと、逆に、人間にとって、アンドロイドをモノのようにみることがすごく困難なことなんだ、というようなことを感じさせる。そもそも、人間は、モノをなにかに見立てる生き物なんですよね。木に神が宿ったり、石に神が宿ったりする国の人間からすると、特別人間の形をしていなくても、たとえば言葉を話さなくても、モノに感情移入することとか、たやすいぜ、と思うので、中身が機械じかけだろうが、アンドロイドに恋するのなんか朝飯まえよ、と疑問にも思わないんだけど。本人が幸せならそれでイージャン、という感じなんだが、まあ、そこに違和感を抱く気持もわからなくはない、と思うのは、アンドロイドは絶対に逆らわない、ということがわかっているので、それを恋人にして連れて歩いている人をみたら、奴隷としか付き合えないのね、といういささか苦々しい気持ちにはなるのかもしれません。。。しかしな、そんなこといったら、多かれ少なかれ人間同志だってそういうとこあるしな。そして、子供がものすごく育児アンドロイドになついたりしたら、親としての存在意義がゆらぐかもしれないが。。。あんなに精巧なアンドロイドが自分のライバルになったら、正直勝てる気はしません。24時間、つねに自分のために尽くしてくれる存在がいたら、人間って、どうなるの? と、そっちのほうが不安な感じはしました。。。あの世界をもっと進めるなら、倫理委員会のあのお父さんも、ロボットのこどもを持てば解決だったのか? すべての人間に、自分の欲求を満たしてくれるだけのロボットがもてたら、コミュニケーションの問題とかなくなるのでしょうか? そして、アンドロイドに対する人間の最大の不安って、「アンドロイドがいるのに、人間がいる必要ってあるの?」ということみたいな気がするんだが、それは、すくなくともあの世界では確実にありますよね。アンドロイドって人間を幸せにしたくてたまらないわけだから、なにもしてくれなくても人間にはいてほしいだろう、、、けど、相手が本当はアンドロイドでも、人間と思いこんでいればいい、となると、アンドロイドだけの世界になってもそれはそれで成り立つのか? という気もしないではない。。。
まあ、そんな感じで、いろいろ考えさせられるお話なんですが、そういうところは置いておいて、私ならというと、やっぱアンドロイド欲しいなー。欲しいでしょう(笑) 欲しいけど、なんつか、癒しにはなっても、それ以上には、やっぱりならない気もします。人って、意外と、思い通りにならないものに惹かれるものだから、自分を裏切るような存在としか、本当のところ恋愛はできないような気がする。。。あ、でも、真崎くんはアンドロイドに裏切られていたよな! つまり、そこが彼がアンドロイドに執着しつづけた理由かもしれません。。。泣きながら頼んだ、という彼の叫びのようなセリフに見ているこっちも涙したけど、あの喫茶店にいる人たちのなかの、彼の状況が一番、恋愛に近く見えたからかもしれない。
「所詮、アンドロイドに人間の気持ちなんて理解できない」
と真崎くんはいうけど、人間同士だって、相手の本当の気持ちなんてわからないし、コミュニケーションのほとんどの部分は一方通行の思い込みと幻想で成り立ってるんだから、相手が機械だろうが人形だろうが石だろうが、同じなんじゃないの、と思う私はやはりヲタクだからでしょうか?
それにしても、人間の、自分を理解してほしい、存在を認めてほしい、必要とされたい、という欲求の切実さってすごいよな、と改めて思う。それを満たすのがアンドロイドなら、それは全然アリでしょう、と思いましたけどね。
ちょうど、石黒浩という研究者の人の「どうすれば人を作れるか」というアンドロイドの本を読んでいるのですが、それを見ていると、もし、人間のようなアンドロイドが作られたとしても、昔の、映画とかによくある人間対ロボット、という構図には、ならないような気がします。はじめは、「へえ」と思っても、すぐ慣れてしまって、それこそ、携帯が日常生活のなかにするっと定着してしまったみたいに、いるの、ふつう、みたいになってしまうのじゃないかな。で、かえって、人間に似せるよりも、わざとロボコップみたいな形態にしてみたり、おしゃれ感覚とか、自己アピールの一貫になって、多種多様な形態になってね。それは、他者というよりは、自己の一部、自分の延長、みたいな。
わりと、あっさりそんな未来が訪れる気もします。
でもな、きっと高いよな!
アニメのなかではアンドロイドの値段には言及してなかったけど、絶対、車ぐらいの値段するよなぁ……で、ちょっと壊れたら、パソコンどころじゃない修理代とられて、車検みたいなアンドロイド検診とかあってまたお金とられて、ちょっと気の利いたカスタマイズしたら違法とかいわれて罰金とられて、管理するための団体が天下り法人になってて中抜きされて……って、すごくせちがらい話になってきました_| ̄|○
結果として、人間のほうがはるかに安上がりでした、ってことに、なりそうなカンジ(笑)