腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

あしたのジョー 実写版

とかいまさらみました。
なんとなく、予告で内容に想像がついていたので自分は地上波待ちでいいや、と思っていたのですが、見たいといわれて仕方なくDVD。

いや、もう、ほぼ想像どおりでした。香川照之丹下段平やりすぎ感とか、山下ジョーの石鹸の匂いのしそうな清潔感とか、もう、とほほ。とほほですヨ!
いや、わたしの世代の人にとっては、ドカベンとかあしたのジョーとかタイガーマスクとか、深い背景とか内容とかを考えられる知能をもつ以前の、ほとんど刷り込みみたいな状態で浸っていた世界なので、冷静にみるとか客観的にみるとか難しいんだが、それでも、それでもよぅ、あれはちがうんじゃねーのか、とっつぁん……とゆいたくなりましたよ。
カリナいらねぇ……。
つか、ごたくはいらねぇ……。
拳が語る男の世界、というか、少年の世界ですよね。
「女はすっこんでろ」という世界観なので、女であるこっちは疎外感を味わうんだが、それでも、虐げられている子どもが一瞬の光を目指して駆け上がる話なので、やはり、そこには万人が共感するところ。
ジョーは見捨てられた子供で、それが不器用なりに必死にあがくのが、涙を誘うし、応援したい気持ちにさせるのだから、あんなこぎれいにしあげられちゃうとなぁ〜_| ̄|○。
あの山谷の風景も、どうかと思いましたよ。なんかさー、まるでテーマパークみたい。あそこで生きることの大変さとか、虚しさとか、ズルさとか、そういう負の部分をちゃんと描かなかったら、戦うジョーの姿が光ってみえないだろうがよぅ、なんなんだよあの、三丁目の夕日的な? 下町万歳的な? そんな美しいものじゃありませんし。とってつけたような再開発話とか、なんなのそれ? おじょうさんと山谷で対立するその構図、なに? いる? いらないよね。そんなことで貧困を語ったような気になられても……と、なんかもう、情けない……。
いや、ほんと、全体的に、ヤマトっぽくダメだな、有名マンガ原作邦画化の駄作がまたひとつ、と肩を落としたくなりましたが、一か所、みるべきところがあるとしたら、伊勢谷くんのリアル減量。一瞬「CG?」と思わせるすごさです。人間て……こんなになるんだ、と言葉を失わせる迫力はあった。すごいよ伊勢谷くん、メタボなのに全然痩せられない私にとってきみは神だよ、と思わず拝みたくなったけど、それと、力石を演じられているか、ということは、またべつだと思うのでした。
あの、あの力石のかっこよさをなんと表現するべきか。侍、力石は侍です。男なら一度は夢見る“オレのアニキ”です。男が惚れちゃう男だよ! それは……伊勢谷くんにはちょっと荷が重い……。
お話の中では、力石はジョーの永遠のライバル、となっているけど、あれはライバルというより、お父さん的な存在だよなぁと。ここまでおいで、とじっと見守り、壁となり、乗り越えるのを待っていてくれる人ですよ。そして、丹下団平はお母さん(笑) いつもそばにいて、ジョーを励まし、食べさせ、心配し、勝利をともに喜んでくれる人ですよ。
このふたりの存在があって、ジョーは人間的にも成長するわけですし。ボクシングの話なんだけど、それを通して、孤独だったジョーがいろんな人とつながっていくところが感動的なので、そのへんを、こう、忘れず表現してくれよと思うんだよな……。

なので、映画、ボクシングのシーンとかね、それなりにがんばっているとは思うんだけど、でも、とにかくそれ以外がだめだめなのでどうせいとゆーの、って感じです。とくに、噴飯ものだったのはあの、力石の遺言? とか? 遺品のグローブ? とか!?
余計なことすんじゃねぇ!
ほんと、余計というほかないですよいらないですよそんなダッッッッサイ演出! お涙ちょうだいにさぇなってねぇ。たんに間延びして間抜けなだけです。
いや、たぶん、考えた人の頭の中に、ジョーが最後に、お嬢さんに自分が戦ったグローブを渡すあのシーンがよぎってしまっていて、へんな具合にミックスされてしまったんじゃないかと思うんだが……とにかく、なんとかジョーとお嬢さんの絡みのシーンを作らないと、と思ってしまったのかもしれませんがいりません。そんな中途半端なことするくらいならお嬢さんとかすっぱり切っちゃえばよかったのに、とおもた。
あの孤児の設定とかさ……_| ̄|○
どうなってんのよもー、おじょうさんは、生まれついてのおじょうさんだから存在意義があるんじゃないのー。生まれも立場も違う人とも、わかりあえる瞬間があるよという希望の象徴じゃないのかよー。
こどものころに原作を読んだときは、なぜにジョーとお嬢さんはうまくいかないのだろうかと首をひねったものでしたが、オトナになるとね、やはり、好きなだけじゃうまくいかないというか、生きる世界がちがうというのはあるんだな、とわかるので、それでもなお、お互いの道がすこし交錯するところがロマンなんだよな、と思うようになりました。だからこその、あのグローブのシーンでしょうよ。言葉ではうまく伝えられないジョーの、気持ちがこめられたシーンでしょうよ。それを変な風に切り張りするんじゃねぇ。

実写をみながら、マンガとかアニメの名シーンを思い出してしまうんだよね。そっちの力が強すぎて、なんかもう、目の前の映像に集中できないくらいです。

結局、映画を見終わって思ったのは、「あしたのジョー」原作、とアニメ版、は名作だったなぁ! ということでした……。
うん、そっちを見ればいいんじゃないかしら。

それか「ミリオンダラー・ベイビー」見たらいいと思います。貧困というもののえげつなさとそこから這い上がってつかむ栄光のまばゆさ、複雑にからんだ愛の形とか、よく描かれていると思う。。。

……そうか、イーストウッドに撮ってもらえばよかったんじゃね!?(笑)
それなら映画館に足を運んでもいい。