腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「コクリコ坂から」

地上波で放送されたので、いまさら見ました。
「ゲド」があまりにも酷く、
駿と吾朗のドキュメンタリーがあまりにも面白かったので、
そういう意味で期待が膨らんだ本作。

……うん。
……うーん……。

なんというか、こう、気持ちを説明するのが難しい。初回は「なんだよ、やっぱフツーにツマラネェ」と思ったんですが、2回目、細部にもうすこし注意してみてみると、まあ、いいシーンも、ない、こと、も、ない、か……?

「ゲド」よりはマシ、という評判を聞いていたのですが、うん、たしかに、こういう日常を淡々と描いている話のほうが身の丈に合っているというか、吾朗さんには合っているような気が。
とゆーかむしろ、ちょっとテンションをあげようと思うのか、無理して入れているアクションシーンほど浮いてみえるので、もう、それはやめたらいいんじゃない? と思ったり。
それよりも、会話の合間の、ちょっと息をのむところとか、ふたりで話していても、すこし間合いがズレている感じとか、そういう、なにげないところのほうが良かったような気がする。
ならんで階段をのぼるシーンとか、わるくなかったかも。。。

や、宮崎駿なら、絶対こっちがくすっと笑ってしまうシーンとかを盛りだくさんいれてくれるのですが、吾郎さんはね、キャラクターが笑っているシーンほど、私的には唐突でびっくりするというか、「なんでそこで笑う?」的な感じがしたので、そうね、やはりエンタメには向いてないんじゃないかしら。正直に言って、一度たりともクスッともできなかったし、かといって泣けるわけでもない。音楽が盛り上がって、おそらく、ここは泣かせどころなんだろうな、というところほどさーっと気持ちがひいたので、うーん……そういう観客の気持ちをコントロールするみたいなことはやめたほうがいいような気が。

背景の説明の仕方もヘタだし、構成もうまくないし、音楽の使い方も奇妙だし、もう、拙いところは山ほどあるんですが、それはゆってもはじまらないので、そういう技術的なことは、もう、いいとしても、そうだなぁ、とにかく、自分が本当に感じたこと意外は一切描かないことにしたらどうかしら?
なんかねー、話的に盛り上げようとキャラクターが声をはりあげているシーンほど、かっこわるく見えるのでした。檀上で演説をするシーンとか、もう、目も当てられない感じです。恥ずかしくて。「ほんと? あなた、そんなこと本当に思ってる?」と問いただしたい。ぜんぜん、共感できない。カルチェラタンの建物に対するキャラたちの思い入れがいまひとつ理解できないからでもあるんですが、大体、作っている人自身、このキャラたちに共感できているのか? と疑問……。
あの時代設定とか、下宿をしながら学校に通っている女の子とか、そういうちょっとした特殊設定のすべてがぼやーっとピントがズレている感じがする。同じ日本とはいえ、50年近く時間がズレたらもう、それって異世界みたいなものなので、作っている人が本気でその世界にいるような臨場感を感じて、上手に水先案内してくれないと、こっちはなにがなんだかわからねーよ、で終わっちゃう。
世界観にもキャラクターにも感情移入ができないとなると、置いて行かれてる感が、さらにどうでもいい感になってしまって、見続ける気が失せる。
いつもいっしょにいる友達とかもさー、もうちょっと使いようはないのかなぁ。
あのトイレのシーンとか「え? それだけ?」と思ったし。いらなくね? メインのふたりだけじゃなくて、もうちょっと周囲の人とのドラマがあっていいような気がするんですが(それが物語の厚みというものではないかと)。

結局、この話の核になっているのって、「おとうさんをひたすら待ち続けているこどものきもち」だと思うのですが、それならもーそれで、あまり余計な設定をいれないで、そこだけを掘り下げた方がよかったんじゃないかなーとか。

てかさ、出だしでおばあさんに「旗をあげているあなたを見ていると切なくなるわ」的なセリフをいわせちゃってるし。テーマを冒頭で口に出しちゃうって……。それは、見ている私たちが感じることであって、ですね、キャラが語ってしまったら、話が終わっちゃうじゃん、という_| ̄|○。

ああーとほほ。

それと、私的に一番期待があったのは、カルチェラタンビフォーアフター。本家の番組が大好きで毎週録画して見ている私なので、その点だけでも、気持ちよく楽しく見れるかと期待したんですけど……うーん……。
うーん、いまいち、消化不良。吾朗さん、建築士なんだよね? それならさ、もっと、こう、そこだけでも、「おおっ」とこっちが思うような、なにかを見せてくれてもよかったよね? はじめはふたりだけでこつこつ掃除はじめて、だんだん人が増えるとか、途中、邪魔しにくるやつらとすったもんだあるとか、そういう……ドラマが苦手なら、逆にもう、ひたすら淡々とカルチェラタンが仕上がっていくのを緻密に見せるとか、こう、なんかこう、ここだけは、これはこの映画じゃなくちゃ、みたいな、なー……。

その点でいくと、「アリエッティ」のほうがおもしろかった。物語的には食い足りない話ではあるんだけど、小人目線の視点がおもしろいので、その点だけでも数回みてもいいかーとは。アトラクション感覚で。
それに、あの男の子にも妙に色気があって、せっかくいいキャラなのに、惜しい! もうちょっと見せてくれよ! という気はしたものなー。なんか、あの話は途中で力尽きた感があって残念だったけど、でも、同じ監督の作品あったらまた見てもいいかも、と思ったし。

なのに、吾郎さんなのねージブリ(笑) 

天才のお父さんとまったく同じ土俵で勝負しようって、吾郎さん、あなた、本当はアニメ好きじゃないんでしょ? 
と、アニヲタの私は見ている間中、ちょっといらいらしちゃったのでした。べつに、そのジャンルが好きじゃなくてもいい仕事ができる人はいるが、それはプロだということであり、プロじゃないうちは下積みしていてくれればいいものをなぜに監督……とゆっても話がはじまらないが。
吾朗さんが好きなのは、アニメじゃなくてお父さん、というのは、NHKのドキュメンタリーを見て万人の知るところとなった気はするが……そこが、私的に微妙。それだけ見たらなんかおもしろい話でもあるんだけどさー、アニメ好きのヲタクからすると、そんなことに貴重な資源を使うなよ、才能があるのに浮かびあがれない若手の人とかに振り分けてやれよ、と。
お家騒動までネタにして売っていこうって、歌舞伎か?(笑)
まあそれも、宮崎駿ほど世間に認知された監督がいてこそだとは思いますけど。

とにかく、ファンが作るパロディ本見ているみたいな気がした「ココリコ坂」でした。だからって、俳優に声をアテさせるのまで真似しなくていいよ、吾朗さんは。そこはプロの声優さんに助けてもらいましょーよ、背伸びせずに。宮崎駿は、絵の表現力がハンパねーから声の演技がいらないのであって、フツーは、絶対声優のほうがいいと思う。
つまらない洋画でも、吹き替えになったらすこしおもしろくなっちゃうほど声優の力ってスゴいんだからさー。「ココリコ坂」だって、二割増しくらいわかりやすくなったかもしれないのにねぇ。

しかし、こーいうことをつらつら考えていると、ふだん、何気なく見ちゃっている数々のアニメが、いかに心を配られて作られているか、つーことを痛感させられますよね。スマン、自分、贅沢になってた、と己を振り返るためには見るべき作品かもしれない(笑)