腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「リアル」

というわけで勢いで見に行きましたよ。貴志裕介につづいて黒沢清祭りです。
うーーーん……。
とにかく、もう画面はみるから黒沢清でした。でてくる場所でてくる場所、わたし釘づけ、ってくらい、美術が素敵。ふたりが暮らしていたマンションとか、「どんだけ稼いでんだ? おしゃれすぎるやろ?」という内装っぷりですし、大体、マンガ家の作業場があんなに美しいって……とそこはちょっと違和感(笑) デジタル化すると実際作業場はかなり美しくなるらしいが、それにしたって資料とかは絶対まわりに散乱しちゃうハズ……とか、いらないことを考えてました(笑) たんに、私、クリエイターの仕事場とか本棚が出てくると興味津々なだけなんで、べつにそこは映画的にはスルーしておけばいいんだろうが、映画だからこそ、画面の端までつい見ちゃう。黒沢清おなじみの廃墟とかもでてきましたよ。島、海、水、博物館、死体にいたるまで、まあ、きれいですわー。ほんと、夢のようです。しかし、今回、そこが逆にわるく作用したかも? と思わないこともない……。
この作品、内容のほとんどが意識の中の世界で展開するので、夢の中が夢のようじゃなあ! っていう(笑)

意識できないから無意識なんであって、そこを描くって、すごくむずかしいと思うんですよね。作品なんだからどうしたって見ている人が理解できるようにある程度は筋道だてて作る必要があって、しかしそうすると、夢の中の風景やセリフがうそくさくなっちゃうっていう(笑)
夢って主観なのに、映画になったらどうしたって客観になっちゃうもんなー……。ほんとの夢が、あんな細部までぱきぱきにリアルってありえないもんね。
小説でもマンガでもそうだけど、夢とか子供とかを、ご都合主義でなく、現実に即して書くって本当に難しいよな〜と思います。右脳的なものって、左脳的にはたんに支離滅裂だもんね。しかしまあ、そういうことを抜きにしても、ちょっとこの作品はうすっぺらい感があったかも……。小説を読んでみないとなんともいえないけど、なんだろうな、眠っている人の意識と同調するって、もっと恐ろしいことみたいな気がするんですよ。しかも、脳死判定でてるひとでしょう……同調してるひとだって、帰ってこれなくなったりしないのか?(笑) 綾瀬はるかがいっしょに船にのったらどうなるんだ?(笑) 大体、意識を失ってから施設に運ばれているだろうに、スタッフの顔がちゃんとわかっているのもヘンな話なんだよねー。
ビルが溶けていく風景とかきれいなんだけどさ、でも、「インセプション」見ちゃったあとだとなぁ! 「シャッターアイランド」も見ちゃったしなぁ!
あと、あの首長竜……もうちょっと、こー……。頭の所に人間の顔がはりついているくらいの不気味さだしてほしかった。高橋葉介とかにデザイン頼んでみたらよかったんじゃね?(笑)
私、すごく夢を見るし覚えているほうなんで思うんですが、夢の中の「ぎゃっ!!!」という恐ろしさって、なんつーか、現実の世界の恐怖とすこしちがっていてですね、こう、原始的な生々しさっていうんかなぁ。。。人に説明できないような、言葉にできない気味悪さっていうか、そういうの、この作品だと死体ひとつとっても理路整然としているというか、美しすぎる気がしちゃうんです。そうね、「イレイザーヘッド」とかが、私としては悪夢とか無意識とかをエレガントに表現している感じがする(わけのわからなさ含め)。やっぱリンチか(笑) 「インランド・エンパイア」とかも、なにが怖いってあの女の人の顔がもう怖いもんなー! 笑いながら階段のぼってくるあの速度とか、ほんと「布団から飛び起きる!」という感じします。あと「パラダイム」とかさ、まっくろい水の中にナニカがいる感じ、怖かったなー。

まあ、ほんとは、別の所にみるべきところがあったのかな? 私は、夢、とか、無意識、とかに喰いついちゃうんだけど。原作は一応読んでみるべきなのか……。

個人的には、首長竜は……いらなかったかな(笑) あのCG、なんかぎこちないっつーか、「ほんとに首長竜でてきちゃうの? 象徴的な意味でなく?」みたいな、ちょい肩すかし感が。そうねー、「グエムル」みたいな怖さだったら「うわー」となったかもしれないが、首長竜だもんな! なんかのび太の恐竜的なほのぼの感でちゃってな。
そしてオチの二転三転、……いるか? くびかざりとか、なんか間抜けだったし……。

いや、こんなに細部が気になるというのは、アレです。話のヒキが弱いんですね(笑) ストーリーが面白ければ、細かいことは気にならなくなるもん。博物館のシーンで「もしかしてこれは立場が逆なのか?」とうっすら気がついたんですが、「いや、まさかそんな安易な展開…」と否定してたらそうだった_| ̄|○。
いや、展開が安易だってべつにいいんですよ。主人公にもっと感情移入できていれば、きまったコースを歩むのだって楽しいハズなんですけど……。
惜しいよ健(笑)
きみ、不器用だよ(笑)
なんか、迷っている感じがでちゃっているというか、ひとりで目が覚めちゃってるというか(笑) 「剣心」のときも思ったんですが、アクション以外のシーンがなぁ……。いや、以蔵はよかった。というか、こうなってくるとよかったの以蔵くらいってことなんだが(笑)
まー、しょうがないです。綾瀬はるかだって、今回の作品にはあんまり合ってなかったような気がするもんね。声がな……なんか、イキイキしすぎてるんだよな(笑)

うん、観て損した、ってほどではないですが、映画館でみる必要はあるのかなーという感じ。ただ、よくある恋愛映画にくらべたら、はるかに映画的体験はできると思います。私は単純に黒沢清的世界観が好きなので、画面見ているだけでも楽しいからいいですけど、ふだん、エンタメ映画しか見慣れていない人はちょっと、退屈しちゃうかも、なー。。。同じ鎮魂がテーマなら萩尾望都の「海のアリア」とか「バルバラ異界」とかのほうがよくできているしおもしろいと思う。

まあ、原作も読んでみないと、どのへんまでが黒沢清解釈なのかってところもありますけどねー。

……つーことで、「贖罪」に期待かなー。