腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「腐抜けども悲しみの愛を見せろ」

「パーマネント野ばら」と迷って、どうせなら最初にあたった作品を、と選んだ吉田大八監督第三弾(自分的に)。
……失敗でした。
あくまで自分的に。
「桐島」のほうがまだテーマとしては好きな感じだった。
「腐抜けども」はねー……うーん、「ヤングアダルト」と「ヘルタースケルター」が足されて薄くなったみたいな……そんな感じの話?
女優志望の長女が両親の事故死をきっかけに都会から田舎へもどってきて騒動を起こす、みたいな、寅さん風の冒頭からはじまるんだが、寅さんほど義理人情も下町風情もない。あるのはムラ社会とDV。まあ、矢口史靖ほど悪ふざけはしてないけど……だからといって、真面目ってほどでもないしなぁ。
ちょっと面白いのはマンガ家志望の次女で、まあ、佐藤江梨子が演じる長女より、この娘のたどる顛末のほうが興味深いのですけど、うん……それくらい?(笑)
とにかく、サトエリが演じる長女の存在が、私的にはリアルにウザくて、観ている間ずっとうすくイライラしちゃってたんですよねー。いっそ沢尻エリカくらい振り切ってくれれば楽しめるんだが、なんかハンパ? 半端なんだよおまえはよ、みたいな……。どうせハッタリで生きているんだから、もっと人でなしを演じればいいのに、その覚悟の足りなさが、ちっちゃい。ちっちゃいのよ……。
どうやら妹も兄もいろんなイミで姉に惚れこんでいるようなので、さまざまな傍若無人が許されているようなのだが、私にはこの長女のおもしろさがまったくわからないので、結局最後までいらいらしてしまいました。なんつかさ、ふつーに生きるってこととか、ふつーの生活、とかさ、あんまりバカにすんなよ、と思ったのね。女優になったりマンガ家になったりするのと同じように、墨焼きやパートで家庭を支えるって大変なことじゃん。だれかが作ってくれた食べ物を粗末にしたり、人からせびった小銭を地面に投げ捨てたりするのって、非道なことじゃん。日々の努力でこつこつと積み上げたそういったものを踏みにじるほどの業を持っているなら、その覚悟がどれほどのものか見せてみろって、思いましたわー。
そういう点でいくと、次女のマンガにかける執念のほうがまだ理解できるんだよね。このひとは自分の力で手に入れた賞金で上京するという賭けにうってでるわけで、それだって家族をネタにしてるんだろ、といわれればそれまでですが、しかし、それを金に換えてるのはこのひとの技術であり才能なので、長女も、家族の仕送りとかアテにせず、自分の力でのしあがれよ、と思うわけです。まあ、兄にせびっているのはカラダと引き換えのカネだとしてもですよ、そこまでするなら都会で他人を相手にした方がもっと稼げるハズだしさ。

とにかく、イタい。この長女はイタいんです。世間的には同じようにイタく見られるかもしれない「ヤングアダルト」や「ヘルタースケルター」は、主人公にある種の覚悟があるというか、自分がしたことの結果をきちんと自分が引き受けているという点で、むしろ尊敬できるところもあるんだけど、この長女はさ、なんか、いきあたりばったりでまわりに依存している感じがイヤなんだよな。

じつは、一番ホラーなのは永作博美が演じるこの家のお嫁さんみたいな人なのかもしれないが……。

とにかく、一回見たらおなかいっぱいなお話でした。

ただ、吉田大八監督がヘタっていうことではないと思いましたよ。わかりやすいのはわかりやすいし、見せ方も上手だと思うんだ。ただ、佐藤江梨子に演らせたのはどうだったのかなーっていうのはあるけど……。まあ、原作読んでみないとなんともいえないですが……なのでほんと、私としては、すごくテンションが下がるのはテーマが合わないのだろうという感じ。

ヘルタースケルター」はまだ映画は見ていないのですが、とにかく原作が衝撃的に素晴らしかったので、あれを持ち出して較べるのもどうかとは思うんだけどねー。