腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「ブラインドネス」

深夜映画。
伊勢谷友介の名前につられて録画しておいたわけですが、見はじめたらなんかびっくりな展開の映画でした。
いや、おもしろ、い? 
おもしろいんだが、ところどころざわつく内容。。。

突然、人類に失明する感染症が流行しだして、という(*ロ*;) なでだしのお話なんですが、基本は狭い精神病院のなかでのサバイバルです。政府によって隔離されちゃうんだけどさ、そのなかに、ひとりだけ目が見えている人がいるのな。それを隠して、はじめはみんなをケアする役を買ってでているわけなんだけれども、そのうちどんどん人が増えて、劣悪な状況になってきて、派閥ができて、抗争がはじまり……という、「コンティジョン」みたいなパンデミックの話かと思っていたら、むしろ「自殺島」とか「蝿の王」みたいな追い詰められた状況での人間性を試される系のおはなしだった……。

いや、私この手の話は好きなんだけど、でも、この映画はねーちょっと、象徴的すぎるというか、宗教的すぎるというか、話の展開の細部がどうというよりは、寓話っぽいんだな……なので、主人公に、自分を重ねて見てしまうと、途中から共感するのがむずかしくなってきてですね、微妙な違和感がどんどん広がって、そうだなぁ……途中で見方を変える必要がありました。
うーん、つまるところ、この“ひとりだけ目の覚めている人”というのが、たとえばキリストであるとか、ブッダであるとか、いわゆる救世主として扱われるような使命を帯びている人をあらわしているようなんですが、じゃあ、その顛末はどうかというと、世界が崩壊したあとに、また、突然目がみえはじめるんですよ、最初の人が。で、主人公のジュリアン・ムーアがさ、“こんどは私が見えなくなる番だ”的なことをゆって終わるんですけど、とほー! 抽象的すぎるネン! てか、宗教的すぎるネン!

これ、キリスト教圏のひとにはするっと理解できる……のかなぁ?
結局、病棟で火に巻かれているひとたちは地獄に堕ちた人々で、私につき従ってきた人たちには、静かな家と食べ物、落ち着いた生活という楽園を用意してあげますよ、といいたいのか?
いや、まあ、目が見えなくなって、はじめて見えるものがありますよ、という、そういうのはわからなくもないんだけどさ、なんていうの? それを表現するのに、この舞台仕立てはちょっと過剰すぎるというか、切り口が一面的すぎる気がしちゃうんだよなぁ。。。

途中、ひどい暴力にさらされて、“服従するか戦うか”みたいな選択にせまられるところがあるわけですよ。で、主人公は、服従する。そのせいで死んでしまう人もでる。で、結局のちに報復するんですよ。それならさ、はじめから戦ったらよかったんじゃないの? と思うわけ。
なにしろ、主人公には目が見えるという圧倒的な優位があるわけで、やろうと思えばはじめからできたはずなのにと思うんだけど、とにかくなんらかの理由で、それをしなかったのに、あとで報復にでるというのはなんなの? と思うのな。まあそのへんに、なんらかの葛藤はあるんだろうが、そういうのを、あまり主人公は表現してくれないので、気持ちを推し量るしかないところがあるんだが、でもな、たぶん、このひとは、普通の主婦という立場ではなくて、救世主的な人物として配置されているんだろうとなると、普通の人間の私にその心理は到底推し測れません、ということで、あとは、俯瞰で結末を追うしかなかったんですが。

ちょっとねー、「ドッグヴィル」と同じ匂いがするんだよなー(笑)
あれよりもずっと飲み込みやすく作ってあるけど、でも、奥底に流れている心理に似たところがあるような……?
なので、見終わった後こう、不可解というか、消化不良というか、なんだろうなー……、
それほど悪質じゃないキャッチセールスに遭った気分、つーか(笑)
入り口と出口が違うやん! みたいな(笑)

まあ、映画ですし表現ですから、どんな思想や信条を描いていてもいいんですけど、でも、はじめにちょっと言っておいて欲しかったよな、というのはあります。途中「なんなのなんなの?!」とあせったっちゅーねん。

まあ、役者さんは芸達者だし、真面目に取り組んでいる感じは好感持てるんですけど、でも、これはけっこう人を選ぶ映画なんじゃないのー? とは思いましたね。キワモノとまでは言わないけど、三分の一くらいのひとはポカンとしそうだ。

深夜って、こういう映画に事故的にぶちあたるから面白いともいえるんだけど、ねぇ(笑)