腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「フジミ(とかタクミとか)」(映像)

……というわけで、見てしまいました。
ジャケット見ながら相当迷ったんだけど、フジミが。特にフジミがいつ見てもレンタルで借りられているので、「そんなに面白いの?」と好奇心が抑えきれなくなり……ここまで来たら、みんな見てやるぜ、とついでにタクミくんのシリーズも借りた。これは、なぜか1だけはいっていなくて、仕方なくトバして2・3・4と見ました。

まずタクミくんシリーズ。
どうやら評判がいいのは1と4らしかったのですが、ないものは仕方ないので2から順番に見ました、が。。。ツラかった。
ツラかったよぅ!
映画館で上映したらしいので、一応映画を見るつもりで見てしまったんだが、あれはどちらかといえばAV……と特撮(昔のね)のあいだといったところでしょうか……。
まず着ているものが安っぽい。寮の部屋が、どう見てもホテルのツイン。舞台のすべてがあまりにも借り物っぽく、まったく生活感が感じられません。外の風景はもうすこしマシにみえましたが、とにかく、学校だというのに人が少なすぎるのです。学園もののドラマってけっこう見てきたけど、そうか、一瞬でも学校らしさを出すって、けっこう大変なことなんだな、と改めて思った。主役以外の人が背景に映っているときとか、ちょっとわざとらしい……なにをしていいのかわかりません、という感じの人がけっこういて、あいたたた、みたいな。とにかく、先生含め役者が素人っぽいので、なかなか世界にはいりこめない。
まあ、予算もないなかやっているのだろうし、そのへんは脳内補完してくださいよ、といわれればあれですが、しかし、役者の演技まで脳内補完はできん。それくらいなら実写にしないでいてくれたほうがよかった。実際に見えているものを即座に脳内で変換ってちょっと……。
とくに、どうも私、タクミとギイを演じている人がだいぶイメージとちがってまして、いやまさか、濡れ場があるのに本当の学生には演らせられん、というのはわかるんだが、それにしても、それにしてもギイが、まるでホストのように見えてしまって、学園の帝王というよりは夜の帝王、酸いも甘いも噛み分けたお水の世界の人みたいな仕上がりにまずびっくり。
そしてタクミ。……なぜ内股で歩く。必要以上になよなよする。きみのなかの受けのイメージがそれなのか。それは一応キミなりの演技プランなのか、それとも監督がそうしろといったのか、とまたとほほ。話し方とかあまりに不自然なので、「ほんとに原作ってこんなだったっけ?」と○年ぶりに読みかえしてみたら、たしかにセリフそのものはそんな感じでした_| ̄|○。
いややっぱり、小説に書かれているセリフを見るのと、それを実際に男の人が口にするのじゃイメージが全然ちがうよ。実写では、あまり不自然じゃない感じに変えた方がよかったんじゃないのかなぁ……。言葉じりとか、ほんとに女の子っぽいというか、いまどき女の子だってもうすこし乱暴な話し方すると思うけど、という感じです。
まあ、ね、まあ、メインはそこではない、ふたりの恋愛なのだ、ラブシーンなのだ、といわれてしまうと、あれですが、でもさ、とにかく、そこまでで全然はいりこめてないので、濡れ場だって退屈なんですよね……もうしわけないが、ざっくり早送りです。で結局、2では、むしろ脇役のふたりの恋愛のほうが面白かったりして。顔つきも好みだったりして。「このふたりの話にしぼったほうがよかったんじゃ」と思う始末です。ギイとタクミいらなかったんじゃ、みたいな。
3もそうなんだけど、とにかく、ドラマが少なすぎる。全体にテンポがのろくて、同じシーンが角度を変えて何回も映されたり、無駄が多すぎるのですが、ただこれ、原作がそもそもそういうお話で、日常の、本当にたあいもないことが書かれているだけだから、それをドラマチックにしろよといわれてもそれは難しい、のかもしれませんが、ならそもそも、なぜこれを実写にしようと思ってしまったんだろうなぁ、という。またね、原作って、タクミの一人称で心の中のことが語られるのが大半、というところがあって、それを実写でもそのままナレーションで流してしまっているので、いやー、それ、CDとかならそれでもいいけど、実写でそれはどうかなぁ、という。不向き。原作として不向きです。
それでもですね、4にもなると、見ている私が慣れたのか、それともやはりスタッフがそれなりに技術の向上を目指したのか、もうすこし、展開がはやくなって、不自然すぎない程度に演技も流して、目も当てられないヴァイオリンの演奏シーンもなくて、まあ……どうしてもどれか見なくちゃならないなら4かな、という感じには仕上がっていました。単純に、タクミ役の人がちょっと頬がそげて男らしくなっていたのもよかったのかも。私は見た目より演技力のほうが大事だと思ってはいますが、しかし、画面で見るとなるとやっぱり見た目も大事なんだよなぁ! とは、再確認。

で、フジミです。
これは、ジャケットみたときからユウキがずいぶん美形に仕上げてあるなぁ、と思っていたんですが、ほんとにわかりやすい美形でした。ちょっと作りすぎなくらいで、逆に、「もうすこしフツーの人っぽくてよかったんじゃ?」と思ったくらい。そして、もう、のっけから違います。まず、いろんな層の人がいる。ほっとします。喫茶店や部屋のなかもそれなりに生活感があるようにしあげてあり、楽器を扱う手つきもそれなりで、調弦したりいれものに収めるシーンもいれてある。なにより、役者さんが。本物の役者さんが!
宮川一郎太、国広富之、徳田優、とちゃんとした役者さんがいましたよ。もう、それだけで全然ちがうよ、すごいよ、やっぱ役者さんてすごいよ、と小踊りです。ところどころ笑いもいれたり、場面転換もはやくてエピソードもテンポよくさばかれる。ほぼ原作通りではあるけれど、何話分かのエピソードをつなぎあわせて、うまく起承転結になるように作ってありました。
いや、いや、いや、これは。これは、なるほど、借りられているのわかるわ、という。これだって、いきなり見ていたら「ふーん」で終わっていたかもしれないが、タクミくんのシリーズをクリアしたあとだと、ことさらよさが際立って見えてしまうというBLジャンルDVDマジックです。
なにごともそうですが、いいものばかりみていると、本当のすごさってわからなくなってしまうものなんですね。タクミくんのDVDにヘコたれていた合間にクドカンのドラマ見たらさ、ほとんど同じ分数なのに、詰め込まれている情報量の段違いの多さにおどろいちゃったもんね。「この差はなに? これが才能?」
と考え込まずにはいられない。
いや、そう、だから、タクミとフジミはソフトなAVだと思うべきなのかもしれません。もとから、使用目的がちがうのです。濡れ場に萌えられないなら見るべきじゃなかったのかも……。ハリーポッター萌えがワーナーの映画を見るのとはわけが違うんです。ええ、でも、ちょっと、私幸せだったのね、と己を振り返った次第。シリーズ後半いろいろ文句を言ってわるかった、贅沢だった、とちょっぴり反省。

さんざんクサして実写版ファンの人がいたら申し訳ないですが、でも、見なければよかった、とは思っていないです。新しい世界を垣間見たわー、という楽しさはありました。

ただ、そうですねー、BLは、実写にしてしまうよりは、まだアニメのほうがいいんじゃないかなぁ、とは。やっぱ、現実というよりはファンタジーという部分が多いので、アニメの絵と声優さんだったら、まだそのへんうまく誤魔化してやってくれるという気がする。

実写でみるなら、かえってがっつりゲイを扱っているもののほうが見ごたえもあるし感動できる気がします。「フィラデルフィア」とか「フィリップきみを愛してる」とか。たんに男同志、というところで終わらずに、人間同士、というところまで踏み込んでドラマを作ってほしいですよね(そうすると萌えからははなれていくという難点もあるが_| ̄|○。)。
そのへんの塩梅が実に絶妙! と思うのが「シャーロックホームズ」映画版(萌えもドラマも笑いもあるよ!)なんですが、その話はまた別の機会に。