腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「ゼロ・グラビティ」

何度も行こうと思いつつ、行けず、評判を聞いて歯噛みしていたんだが、なんと近場の映画館がリバイバルしていた。。。行くっきゃないっスよね! もう、DVDが出ているけどね!

ということで、見てきました。
スクリーンもちいさいし2Dだったが、この際贅沢はいえぬ。すくなくともテレビで見るよりはいいハズ。。。と見始めて、うん、やっぱよかったです。映画館は音もいいしな。それ、今回けっこう重要な点だったよな。

大好きな宇宙要素満載だったのにすぐに飛びつかなかったのは、アルフォンソ・キュアロン、彼の映画をね、わりと見ちゃってたからなんです(笑) 出合いはハリー・ポッターだった。いや、アズカバンの囚人、シリーズのなかではよくできている方だとは思うんです。いいところは一杯あるんだけど、でも、ハリポタスキーじゃなかったら見ないよな。。。そして、そのあと「トゥモロー・ワールド」「天国の口、終りの楽園。」も見たんですが、うん……一回見たら十分だよな、という感じに、ほとんど印象に残らなくて、私、キュアロン、合わないわー、と思ってしまってた。スマン、間違ってた、すくなくとも「ゼロ・グラビティ」に関してはそうでした。普通にいい映画でした。

私は3Dで見ていないので、これがアカデミー賞7部門にふさわしいのか、「タイタニック」や「アバター」を超えるほどの映画なのかはわからないんだけど……そうね、たしかに、内容は「タイタニック」に近い感じがしました。海に落ちてからの話のほうが長いタイタニック、っつーの?(笑) 船が沈没する、ということの恐ろしさをあれほど感じさせてくれた映画もなかったが、宇宙に放り出される、ということを、これほど怖ェエ! と思わせてくれる映画もなかったよ「ゼロ・グラビティ」! いやもう、怖いとかいうより、メンドクせぇ。無重力、メンドクせぇ! っていう、ね。宇宙に行こうと思ったら、もう、サルかワンダなみに腕力を鍛えていかないとダメだわ、マジで。
アポロ13」とかにくらべると、ちょっと、こう、宇宙的に、マンガっぽいな、実際はこんな風にならないんじゃないのかな、と思わされる、若干ファンタジーがすぎる展開や描写もないわけではないんだが、うん、それはいい。今回、それは大事なポイントではない、というのは、三分の一くらい見るとわかります。こいつら、宇宙で作業してんのに、べらべらべらべら、しゃべるねー、しかも、大事な酸素が減り続けているのにまだしゃべってやがる、といささか腑に落ちない会話シーンが続くんだが、その話している内容が、あとになって効いてくるんです。なにしろ、主な登場人物2人ですよ、そのうちの1人、わりとすぐにいなくなりましたよ。うそーーーん! 生きて動いている人、サンドラ・ブロックしかいねーよ! どうなるんだよ! 
ってわけで、あとは、大体、サンドラ・ブロックのひとりごと、そして次々とドミノ倒しのごとくトラブルにつぐトラブルです。。。これ、もしかすると、人によってはちょっと退屈な映画になっちゃうのかなぁ……宇宙、という、非常に特殊な背景がなかったら、話の展開だけでいうと、ひとり「ダイ・ハード」だもんな。アクションに興味もてなかったらなにも残らない感じしちゃうかしら。。。ってならないのは、なんていうんですかね、やっぱり、“宇宙”を舞台にしたキュアロンの勝利、って感じが、最後はしたんですよね。

なにしろ“宇宙”ですよ。宇宙服という皮一枚で隔てられているだけで、その外側は絶対の死の世界、無限に広がっている闇の中で、自分の生は、本当にちいさな、限定された空間にしか存在していない、そんな状況にいたら、なんていうんですかね、生きているほうが不思議、むしろ、死んでいるのがあたりまえみたいな気がしてくる。。。実際、それを証明するがごとく、仲間は、じつにあっさり向こう側に飲み込まれちゃいます。こんなに苦しいのに、なんで必死にしがみついて、がんばらなきゃいけないんだろう、というはじめの理由は、たんに、死に対する恐怖でしかない主人公なんですが、それが、変化する。打つ手がなくなって、絶望し、もはやできることはない、死ぬしかない、となったとき、ある転機が訪れるんですが、その演出がねー、私は、すごい腑に落ちる、つーか、その瞬間に、「いい映画に確定!」という感じでした。
あとは怒涛です。地球に墜ちていくあのシーンは、迫力もあるけど、それだけでなく、すごく美しい、感動的なシーンでした。そこだけはね、2回見て、2回とも泣けたもんなー音楽もイイんだよなーくそーキュアロンめー。

ああ、生って儚い、人間ってちっぽけ。でも、サンドラ・ブロックが苦闘しているときにも常に視界の端に映っている地球が、あまりにも美しく、まるでこっちを見守っているようで、なんていうんですかね、いま、ここで死んだっていい、ジョージ・クルーニーの死にざまだって悪くないなーと私に思わせた。。。そうやって、“死”を受け入れると、逆にね、それなら、がんばってみたっていいじゃない、最後まで、わるあがきしてみてもいいんじゃない、どちらを選んでも、それは終わる瞬間まで楽しい旅なんだから、という、そんな風に思わせてくれたところが、この映画のすばらしいところであると思います。

極限状態って、ある意味シンプルでもあるから、呼吸をしている、という、たったそれだけのことが、生きているということなんだ、という、それが素直に理解できる。大地の上に自分の足で立つ、それはすでによろこびなんですよ、ということが、ちゃんと感じられる。

これ、原題は「グラビティ」なんですよね。
重力を描きたいがための、容赦ない無重力の世界でした、という、いやー、オチも完ぺきだったよ。キュアロン、おまえ、すごいな、と、ほんと、素直に称賛です。

あと、サンドラ・ブロックの太ももな! あの力強さったら、もう、最後のシーンを飾るにふさわしいって思いました(笑)