腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「インターステラー」

映画館で予告をみておもしろそうだったので、見に行きました。

正 解 だ っ た 。

ちょーーーおもしろかった!

いや、おもしろかったというといかにもエンタメっぽい作品なのかと思われるかもしれませんが、思い返してみると、わりと地味、というか、SFという枠よりは、ヒューマンドラマ、とかのほうが合っている気がします。人類滅亡の危機! をなんとか! っていう話なので、ちゃんとハラハラドキドキもありますけど、かといってアルマゲドンみたいな派手派手しい映画ではなく、私の中で近いのは「コンタクト」とかかな?
いや、話の展開の仕方は「タイタニック」とかにも近い気がするけど、あれほどキラキラはしていない。そしてノーランが作っているだけあって、重い、つーか、抽象的なセリフとかもけっこう出てきますので、人によると途中で疲れてしまう可能性もありますが、最後までみれば、すべてがつながっていた、というのは、ちゃんとわかるようになっています。

(えーと、基本、私の書くものネタバレなのでいつも注意書きとかしませんけど、まだ見てないけどこれから見る、という方は、このあと読まない方がいいかも……なにも知らないでみるほうがたぶん、いろいろなイミで楽しめると思うので)

えーと、それでですね、これ基本はSFだと思うんですけど、「ゼロ・グラビティ」みたいなのを期待していくと、ちょっと肩すかしかも……もうちょっとファンタジーっぽいというか、こう、ブラッドベリみたいな寓話っぽい世界観なんで、おもしろいアイデアはぽつぽつあるんですけど、それを細部まで描きだすことにはあまり重きを置いてないです。基本、ざっくりしています。いろんなことが(笑) なので人によっては「なんで? どうして?」と?マークが連発するかもしれないが、そこは思い切って無視。暴力シーンの少ない「96時間」だと思って、主人公の気持ちに寄り添って見るのが吉です。そしたら、めちゃめちゃ泣ける。いや、娘の立場にたっても泣けるし、博士の立場になっても泣けるし、もう、誰の立場になっても泣ける。マン博士の立場になってさえ泣けるよもう、私劇場で泣き通しだったので、最後頭痛がしてきました。いや、「タイタニック」みたいな号泣、という感じではないんだが、こう、常に静かに泣ける。もうね、人類すべてに対する鎮魂、て感じの話です。すべてはすでに失われていて、もう取り返しはつかないんじゃないか、という、諦観の中で話がすすんでいくので、つらいことはつらいんだが、でも、愛が! 愛がそれを救うよ!
こんなこというと陳腐に聞こえるかもしれないが、それがね、あの、砂だらけの、希望のない、疲れた人々の描写を見ていると、結局最後はそれしか残らないじゃん、という気持ちに、切実になります。
宇宙のシーンとかもね、あまりに巨大な土星とか、想像を絶する津波とか、全てが凍りついた世界とか、美しいけれど、畏怖を感じさせる、ああいう極限の世界をみせられるとほんとー人間てちっぽけなんだよな、だからこそ、身を寄せ合って生きるしかないんだよな、という気持ちになるのね。
孤独。みんな孤独に闘っています。みんな悲しい。きっと、いまのアメリカの人たちの心情ってアレなんだろうなーという、そういうのが伝わってくる。大きい何かに頼るのはもう、無理、みたいな……でも、周りの人と、ちょっと手をつなぐ、ちいさくつながることで、孤独に耐え、未来を目指す、みたいなね。いや、日本人的にはね、ああいうふうにはなれないよねー……正直、宇宙のコロニーで生活したり別の惑星に移住したりするよりは、地下にドームでも作って暮らす方が効率いいんじゃないの? と思う、ここがもう、土地にしがみつく日本人気質(笑) 重力をあやつるほどの力を手にできるならむしろ、環境を変化させるんじゃなくて自分を変化させるわけにいかないのか、酸素が薄くても生きられるように遺伝子とかいじれないのか、と思ったもんね(笑)
そうするとまあ、巨大なブラックホールとか見ることもできないわけで、5次元生物と接触することもできないわけで、つまらないのはつまらないですよね。米人の、好奇心と、絶対にあきらめないあのタフさ、見習いたいよねー……。

というわけで、期待を裏切らずに主人公、ワームホールのなかや、事象の地平の先まで見せてくれますよ。てかもうあれ、この世じゃないよね。あの世だよね。救世主というのは、一度死んでまた生まれ変わることになっているので、124才で土星付近でちゃんと復活するっていう(笑) これだけみてるとマンガか! って感じですけど、いやもうほんとは、ブラックホールの近くで船から切り離された時点で、この人死んでるんじゃないかしら、っていう気もしました。そこから先は、主人公の内面が具現化した精神世界。夢と希望とイリュージョン(笑)

でもいいじゃないですか。私、療されたしな。あんだけがんばったんだから、あれくらいの夢見させてやってほしいよね、うん。
結局このたびの作品も、すごくノーランらしい内容だった、ということで。。。「メメント」にしろ「インセプション」にしろ、テーマは常に、失われた愛を取り戻すために格闘する男の人の話だもんね。そして、今回も“時間のズレ”がおもしろい使われ方しています。「インセプション」で下層に堕ちるほど時間が引き延ばされていったのとは逆に、ブラックホールに近づくほど、地球に較べて時間が短くなる、という、ね、そのへんが、また話をおもしろくしてます。この話、娘の立場からみたらさ、父親は子供のころに死んで幽霊となっていて、自分に霊感をあたえつづけていた、そして死の間際にのみ、別れた時の姿で会えるという、それ単にオカルト話じゃん、なんですが、それがSF風に味付けされるとあんな感じになるっていう、それもなんか面白かった。進みすぎた科学の話ってもう、素人からはオカルトと変わらないね(笑) 重力は次元を超えるとかゆわれてもな(笑) マジか、ていう(笑)

そしてそして、主人公マシュー・マコノヒーなんですけど、私の中で彼は“米版ヒュー・グラント”って感じのちょっと半笑い(いいイミで!)になる役者さんだったんですが、いつのまにこんなリーアム・ニーソンみたいな仕上がりになってしまっていたのか……はじめ、顔だけみたら気がつかなかったよもーびっくりしたな(笑)
いやいや、いいんじゃないですか。今後に期待大です。このところ、「ゼロ・グラビティ」とか「インターステラー」とか、宇宙な面白い映画が見れて幸せです。迫力の土星とかさ、大画面で見れるって、やっぱすごいよねー。あと、ブラックホールに堕ちた先にある五次元空間とかもさなんか、「2001年宇宙の旅」にでてくる、ハルの記憶装置を解除していく部屋? あんな感じでおもしろかったよね。時間と記憶と人生が交差する場所が本棚に囲まれた空間って、なんか、わかる気がするっていうか、ああいうの、ノーランはうまいと思いました。はい。

ってことで、ウォシャウォスキー姉弟の映画もすごい期待してる。



※ 集中して見るのがよいし、音も意外と大事なので、やはり劇場がおすすめのこの作品ですが、なにしろ長い(169分!)ので、席をえらぶときに気をつけたほうがいいかも……無理な姿勢だと、首や背中が痛くなることうけあいです_| ̄|○。