腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「渇き。」

見始めて20分で後悔したこの作品、「告白」で有名な中島哲也監督です。
私、有名な「下妻物語」は見ていないのです。「嫌われ松子の一生」は、テレビでちら見したんですが、なんかイヤな空気を感じて途中でやめ、「パコと魔法の絵本」は、一応地上波で見たんだけど「……?」という感じ。なので、一応、まともに見ておもしろいと思えたのは「告白」だけだったんですが……、あれも、オチにちょっとがっかりして、でも、全体としてはよくできた作品だったなぁ、とは思ったので、今回も期待していたんですが、うーん……原作がそもそも合わないのかなぁ、「果てしなき渇き」読んでないのでなんともいえませんが、とにかく、暴力が_| ̄|○
いや、暴力、というだけなら、「OLD BOY」とか「冷たい熱帯魚」とか「黒い家」とか、すごいの他にもありますけど、なんだろうなぁ、それとはちょっと違うんだよなぁ。。。これらは、物理的な暴力描写もさることながら、むしろ精神的な、心理的に追い詰められていく感じが丁寧に描いてあって、そういう点ではちゃんと人間が描かれている感じがするんですけど、「渇き。」はね、こう、文脈とか理屈とかはさておき、過激でスタイリッシュな暴力描写がとにかく大事、みたいな……絢爛豪華なバイオレンスとかも、うーん、むしろ笑える、ギャグと紙一重みたいな、タランティーノとか、ポン・ジュノとか、そんな感じならまだ受け入れられるんだが、そういうのじゃないの。とにかく凄惨、笑っているのは画面の中の人たちだけで、見ているこっちは全然笑えないっていう、すじがきなんかどうでもいい、日常とつながっているようで、じつは全然関係ない、みたいな置いてきぼり感も、ツライ。
カメラの近すぎる感じとか、カラフルな色合いとか、役所 広司の雑な食事シーンとか、狙ってやっている演出なんだろうけど、疲れる……見ていてストレス。話も、現在と過去を行き来しながら細切れにすすむので、それも集中が途切れる原因でした。DVDだったので、私は途中で休憩いれて見ましたけど、これ、映画館だったらツラかっただろうなぁ……お金払って苦痛な思いして帰ってくるってタマランな(笑)
いや、中島哲也監督は、もちろん、才能のあるすごい人なんだろうなぁとは思うんですよ。役者の配置とか絶妙だし、新人の使い方もうまい。学校の空気感の出し方とかも上手なんだけど、こう、やっぱり見せることがメイン、っていうのかなぁ……、「シングルマン」が、画面がスタイリッシュすぎて内容が頭にはいってこなかったのに似ている。もうちょっと抑えてくれればいいのに、と私なんかは思っちゃうんだけど、でも、この過剰さがいい、という人もいるだろうとは思うので、うーん、これは好みかな……。
あとは、やっぱり、誰にも共感できなかった、というのもキツさの一因かもしれません。なんのためにこの物語を追わなくちゃいけないの? という気になってくる(笑) 主人公の役所 広司はもちろんのこと、被害に合う側のこどもたちにさえ共感できない。なぜって、みんなが夢中になる、悪魔のような魅力を持った“かなこ”という女の子の、その“魅力”が全然理解できないから。かなこ教の信者たちから、私、爪はじきです(笑) 耳元で“愛してる”とかささやかれたってさぁ……そんな陳腐なセリフ、としか思えないし。“自由”って、あれが自由か? 通常人が大切にするものを、投げ捨てて見せることが自由、とかいわれてもさ、と、こう、全体に腑に落ちない。
たぶん、かなこのような、ふつうの思考回路とあまりに違うので、まわりが混乱して振り回されていくタイプの人、というのはいるんだろうけど、ふりまわされているようにみえるまわりの人間も相応に狂っているので、もう、後半は百鬼夜行、という感じで、「ああもう、なんでもいいからはやくケリをつけてくんないかな」としか思えなくなっていました。はい。あと、個人的に、松永の結末が怖すぎたので、この作品は二度と見たくありません。かるくトラウマ。
唯一よかったのは妻夫木が演じる刑事かなぁ……アウトレイジ小日向文世が演じたみたいな、あれをもうすこしポップにした、笑顔がうさんくさすぎる人です。これを妻夫木にやらせるってなかなか……と、それだけは、うん、よかった。おもしろかった。車にはねられたのを見てスッとした(笑)
しかし役所 広司って暴力がにあうなぁ……新井浩文とかソン・ガンホとかと同じ枠、ってことは、コメディもできるんだろうな、と思いますが、三谷作品はあんま、わらえないんだよな。。。