腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「ヘヴンズストーリー」

テレビで古館さんがすごい褒めていた。劇場オンリーと聞いていたのに、ゲオで見つけてしまったので借りてみました。おお、上下巻か、「愛のむきだし」以来だな、と一応気合いをいれて見始めたんだが、うーーーん……。
これは、難しいな……。
というか、まちがっても人にはおすすめできないな、と思ってしまいました。殺人事件にまつわる復讐の物語なので、内容が重い、というのもあるけど、とにかく、長い!
長すぎました。時間だけをいったら「愛のむきだし」だって同じくらい長いと思うんだけど、あれは、見ていてあっという間だった、退屈しなかった、むしろ、もっと見せてくれてもいいのに、と思ったくらいだったので、単に時間の長さだけの問題じゃないんでしょうね。海外ドラマなんて、ワンシーズン一気見したら6〜8時間のやつとかザラだしな……。
オムニバス形式になっていたのも、私、合わない理由のひとつではあったと思います。ひとつのエピソードが30分くらいなんだけど、出てくる人の顔を覚えて状況をなんとか把握して、慣れたかな、くらいでまた別の人の話がはじまるので、「え? さっきの話、どうなったの?」とこっちの頭の切り替えがうまくいかないんです。一応、後半になると、それぞれの人生がつながってきて、全体像が見えるような作りにはなっているんだけど、そのころまでにはへとへと。疲れちゃって、とても上下巻をつづけて見る気にはなれなかったので、私はあいだに一日置いてしまいましたが、いやぁ、これ劇場でつづけてみたらぐったりしただろうな……。後半の方が話に盛り上がりがあるので、前半で疲れちゃったら損なんだけど。。。
なんかね、半分くらいに削れますよね? と正直思いました。でだしの海のいざこざのシーン、いるかな、とか、佐藤浩市が殺される話、いるかな、とか、ヒロイン・サトが集合住宅の公園をえんえん走り回るシーン、いるかな、とか、そういうのがけっこうあるんです。どうしてもいれたい! んだとしても、もっと短くできるよね、なんで私、雪の中で追っかけっこしている場面にずーーーっとつきあわされなきゃいけないのかしら、ともう、後半は、もうしわけないけど退屈なところは倍速にして見ました。合間に人形が踊るシーンとかもはいるんだけどさぁ、頭がぼんやりして全然集中できなかった……。役者さんはね、みんなすごく上手だし、ぴったりハマってるなあ、と思えるんだけど、とにかく、話がなかなかすすまない。それだけでなく、私からすると、出てくる登場人物の行動が、なんだか不可解なんです。。。
いちいち全部あげているとキリがないのでアレなんですが、そうだなー、一番腑に落ちなかったの、ロック姉さんの話かなぁ。ヒーロー役トモキの奥さんになる人との出会いの話なんですが、仕事で合鍵を作りに来ただけのトモキに絡みまくったあげく、会社に“あのひとにレイプされました”とか通報。コワッ! って、なるよね? 真実ならまず、警察じゃね? いたずらにしちゃ、性質が悪すぎね? まともな会社なら、本人にひとりで話をつけさせたりしないよね。第三者をまじえて、なんなら録音、録画の用意してからじゃなかったら、危なすぎて対応できない。なのに、トモキ、電話でかるく会社に“はなし聞いてきます”とかいって、案の定、一晩中ライブだのカラオケだのつきあわされたあげく、“感動できるところにつれてって”とかイミフメイのことをいわれて車で海に連れていってます。こんな悪質なクレーマーと車でふたりきり! どんな罠にはめられるかわからんとか、警戒心、ないんだろうか? ……うん、ないんです。浜辺でわけもわからずキレられて、慰めて、次に出てきたときには結婚してました。娘もいました。
……コワ。
コワすぎます。この展開、一ミリも理解できん。凶悪な犯罪の被害者になった人は、普通ではありえない行動をするとでもいいたいんだろうか。同じ、犯罪被害者であるヒロイン・サトにも、ほぼ共感できませんでした。同じ被害に遭ったトモキに方向のよくわからない愛情や見当違いの崇拝の念を抱くのとかは、まあ、こどもだしな、とギリ許容できたんだけど、高校生にもなってから、復讐を強要しはじめたり、逃げた奥さんの立場になりかわろうとしてみたり、それを、トモキがなあなあで受け入れて、ずるずるずるずる殺し合いの方向に話が流れていくのも、気持ち悪かったなぁ……。
加害者を滅茶苦茶非難するのに、自分が行った加害についてはいまひとつ鈍感な人たちばっかりでてくるんです。江口のりこが演じる妊婦なんてもう、やりたい放題ですよ。病気のお母さんから金をむしりとる、知り合いの部屋に押し入って勝手に金目のものをあさる、車上あらしだけでなく、車の持ち主から金を脅し取ろうとしたあげくに拳銃で撃ってますからね。すごいよ、立派な犯罪者だよ、なのに、「出産に金が必要なんだよ!」と逆ギレ、“生まれる〜!”“生まれた〜!”ですべてはうやむや。なんとなく幸福な結末、みたいになってさ、びっくりしちゃうの。“エイプリルフール”か?(笑)
ひとりくらい地に足をつけて生活してるやつとかでてこないのかよ、みんなふわふわ、ふわふわしてるんだよな〜、警察官が副業で殺人の請け負いとか意味わからんもんな〜。ナイフで切りかかってきたから正当防衛で撃ち殺してしまった相手なのに、その家族に贖罪するために人を殺してお金を手に入れるという、この矛盾。昼間の動物園で飼育員を拳銃もって追いかけ回したり、ギャグか? もう、ギャグなのか?
てか、人さまの家族を心配しているどころじゃないんだよ、自分の息子がひったくり、おきびきで滅茶苦茶にボコられているんだよ、あげくに橋の上から線路にダイビング。病室から窓の外の雪をふたりでほのぼの眺めたりするんだが、うん、そんなことのまえに、ほかにやることあるんじゃないのかな? 大丈夫かな?
……大丈夫じゃありませんでした。息子のほうじゃなくて父親のほうが、冷たい躯になってダンボールにインされてました。。。とほほ。。。

なんか、みんないろんなことを泣いたり叫んだりしながら主張してくるんだけど、その言葉を裏付けるはずの行動が、支離滅裂にみえるんです。トモキ、“俺は妻と娘を守れなかった”と泣くんだが、それなら、今いる妻と娘を守ろうとするべきなんじゃないのでしょうか。娘、まだちいさいのによ〜、人にそそのかされて殺人とかしている場合なのかよ〜。

もうね、そんな感じです。だいたいいきあたりばったりで、最後は殺し合いです。ほんとうに不毛。なのに、それを仕掛けたヒロイン・サトだけが、結末に死んだ家族と再会してファンタジックに救われているんだが、どういうことですかWHY? もしかして、もう、サトも死んでいるんですか? わたし、なにか見過ごしているんでしょうか?
……まあ、そうかもしれん。
とても二回見る気になれなかったので、見落しているところもあるかもしれない。。。

ということで、復讐は復讐の連鎖を生み、地獄絵図に、みたいなことなんでしょうが、地獄を描くのも簡単じゃないんですね。。。同じジャンルの作品だったら「怒り」とか「恋人たち」とかのほうが、ずっとよくできていると思いました。あと「シークレット・サンシャイン」とかさ……。復讐ものだったら「オールドボーイ」とか「親切なクムジャさん」とかね。復讐ものというジャンルがあるとしたら、韓国映画はピカイチですよね。

あとで調べたら、これ自主制作映画なんですね。
だからいらないシーンを切れなくなるのかなぁ……監督の思い入れが強すぎて、本当はいらない場面でも人に見せたくなっちゃうのかな。でもさ、そうなると、こっちは見返す気持ちが失せるので、トータルでは見る時間、結局少なくなるのよね。