腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「半島を出よ」

村上龍です。
村上龍はね……こう、私、すごく本を選ぶのね。
コインロッカー・ベイビーズ」は本当に衝撃的に面白くて、というか、面白いとかを越えて、ちょっと自分がオカシくなるみたいな、そんな影響力があって何気に恐かったんです。そのあと、順当に「69」とか「だいじょうぶマイフレンド」とか読んで、おなか抱えて笑ったんだけどさ、そうやって出てる本読み進んでいくと、たまに、すごーーーく恐い本がまぎれてて、「うわー……読まなきゃよかった」_| ̄|○。
となることがあり、だんだん縁遠く。
たまに手に取ってみても、「……いや、やめておこう」みたいな。
「トパーズ」読んでがっくりきて縁遠くなり、「希望の国エクソダス」と「最後の家族」は面白かったんだけど、やっぱりなんか怖くなって、そのあとまた縁遠くなり。そうして、村上龍といったら「カンブリア宮殿」をたまに見るくらいの感じになっていたんだが、先日、たまたまネットで爆笑問題と鼎談しているのがあってですね、そのとき「半島を出よ以上のものはいまは書けない」みたいなことを言っていて、「へー、そんなに力をいれて書いたのか」とひさしぶりに。すごいひさしぶりに読みました。
村上龍は、とにかく読み始めたら止められないから、上下揃えてから読み始めましたけど、失敗。
最初の数ページで「うわー、失敗した!」となった_| ̄|○。
怖い。
怖い本だったー!

舞台は2011年の日本で、経済が破たんしていて、失業、自殺、ホームレスと、いまもある問題がさらに悲惨なことになっていて、そんな状態のときにですね、北朝鮮が、福岡を乗っ取り、ゆくゆくは九州を独立させます、なんていう、そんな話です。

うん、それだけ聞くとね、マンガっぽく聞こえるのかもしれないんですけど、読むとさ、もう、本当にそんなことになりそうなリアリティがあるっつーか、それだけでなく、とにかくもう、暴力と支配、貧困と差別、がこれでもかこれでもかこれでもかと。

あー……。
死にたくなる……。

こんな世の中なら死んだ方がマシじゃん、
て気分になる(とくに北の描写)。

いや、本当の、現実の世界には、もっと美しいものとか、やさしさとか、穏やかさとか、ちゃんと存在していると思うんだけど、そういうものが遠く感じられてくるんです。

あー怖い。
怖いよーーー!

こんなもの書いててよく平気だな〜、村上龍。オカシくなんないのかなー、とマジで。
最初の10ページでもう「読むのやめたい!」と思ったんだけど、最後までよまないともっと怖い感じがして仕方なく読みましたよ。かなりトバしたが_| ̄|○。
それでも三日かかった。イヤな夢をみそうな気がしたので、寝る前には「体脱」の本とか読むようにした。

うん、まあ、オチまで読むと、「……なるほどなぁ」と思うところも多々あるんですけど、それでもさ、ここまで暴力をナマナマしく書く必要あるのかな、とは思いました。あとさ、なんだろうな、たしかに、おっしゃること、ごもっともです、そのとおりです、とは思うんだけど、それでも、そこまで言われると、身も蓋もない、というか、立つ瀬がない、という気になったよね。
あとは……なんだろうな、あまりにも、展開が読んだ通り、頭で計算したとおりに進んでいくんですけど、実際にはさ、ものごとって、特に、こんなにたくさんの人がかかわっていると、もっとこう、人智を超えたナニかが作用するような気がするんですが……どうですかね。話の風呂敷は大きいんだけど、ちょっと切り口が一面的な気はしないでもないでもない……。
まあ、それでも、さすがの村上龍、最後まで話を動かしていく力のすごさみたいなのはあいかわらずだなーと、そこは素直に称賛。です。

でも、またしばらくいいや、村上龍_| ̄|○。

なんかさ、これ、映画化するって話があるらしいんですけど……。
わー怖い。
いや、映像になったら、逆に小説の恐ろしさが失われる可能性もありますけどね。
村上龍原作の映画化というと、「ラブ&ポップ」なんか見に行きましたが、うん、あれは面白かった。オチはやっぱり村上龍っぽかったけどね……。

はぁ〜ぁ、貴志裕介とかも怖かったけど、そんなものじゃない、私の中ではダントツの恐怖小説作家だよねー、村上龍
いやほんと、これに比べたらゾンビとか癒しですよ。
ホラーや心霊のほうが、はるかにロマンチック、と思いました。