腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「教団X」

本屋で平積みになっていたのと、タイトルに少々興味が沸いて、読んでみました。中村文則、まえに一冊読んだような気がするんだけど、もう内容を覚えていない……。
本が分厚いので、寝ながら読むことの多い私にはなかなかの苦行でしたが、うん、最後まで読みました。
うーーーん……。
なんだろうな、題名からうっすら想像していた内容とは、ちょっとちがいました。「教団X」とついていたので、カルト的な宗教について書いているのかな、と思ったんですが、「教団」は、ただの、舞台装置なのかな……あまり、その仕組みとかについて説明しようとはしていませんでした。
じゃ、なにが書かれているんだと言われると、こう、よくわからない(笑) ふたつの集団と、ふたりの教祖、そして、その弟子っぽい立場の男の人がふたり、の隙間に、女性が何人か関わってくるんですが、関わっているようで関わっていないというか、結局それぞれが、自分語りをして好き勝手に動いているだけというか……。
その合間に、量子とか仏教とか運命とか、若干インチキ臭い教義? なのかなんなのか、そういう語りもけっこうな長さでさしこまれるんですけど、それと、物語とが、うまくつながっている気もしない……けっこうな分量でいろいろつめこまれてはいるんだけど、あまり整理されていなくて、どこにポイントを絞って読んだらいいのか悩むな、みたいな。。。
キャラがな、立っているようで、立っていないんだよな。。。表面上はいろんな人を出しているんだけど、一皮剥くと、全部一緒、というか、結局、3種類の立場の人しかいない。師匠、弟子、女、という、この関係のバリエーションがいくつかあるだけ、という感じで、こう、同じ話をくりかえし読まされているみたいなのが、まあまあ退屈ではありました。
過去の話が中心で、現在の話があまり進展しないのも「うーん」だし、後半におきるテロも、なんか唐突でした。

一応、私は高原という人になるべく的を絞って興味を持続させようと努力してたんですけど、この人もな……何回撃たれりゃ気がすむんだよ、というか(笑) 死ななすぎっていうか(笑)
主人公は楢崎という人なのかもしれないんですが、この人の流され加減にも本当……えーと、もうちょっとこう、立ち止まって考えてみようよ。知らない集団と関わる時は、もう少し警戒心持とうよ。女の人が服を脱いだらすぐ寝ちゃうって、どうかと思うよ?

全体に、キャラクターが物語をいきいきと生きている、というよりは、作者の言いたいことを代弁するために都合よく配置されている、という感じが強くて、おもしろいところもあるのに、良さが損なわれている感じがしました。
あのへんな教義もさ(笑)
モーガン・フリーマンの番組見た方がおもしろいしわかりやすい……どうせうさんくさくするなら、もっとおもいきって奇天烈にしたらいいのに、と思うんだけと、ぶっとんだ設定を作れるのも実は才能だから、向き不向きがあるんだよねぇ。。。

私は要所に見える中村文則さんの考えには肯けるところもあるんだけど、それと、物語の魅力とはまた別っていうか……あと、笑いのセンスとか絶望的に合わない(笑) 奇妙な人や状況を描こうとしているのかもしれないけど、奇妙が上滑りしている……そして、カリスマとされている教祖が全然カリスマじゃない(笑) とくに、沢渡がなぁ……。この人をうまく描いてくれなかったら、物語全体に説得力がなくなっちゃうじゃん……と、少し期待した分かなりがっかり。彼が、このお話のなかで“悪”を体現している人なんだろうと思って読んでいたんだけど、どうも、ふつう……いや、たしかに悪い人ではあるんだけど、悪の記号のつぎはぎっていうか、あの、ヘンな台詞まわしにもがくっとくるし、うーん、難しいなぁ……。

そして、これは仕方のないことなのかもしれないですが、男性が書いているだけあって、出てくる女性のキャラクターが本当、薄っぺらいです。なんだ、女は全部恋愛を動機にして行動するとでも思ってんのか?(笑) 女にだって野心も権力欲も職業意識も生存本能もあるが? 「おいおい、この場面で恋愛にうつつを抜かしているって……」みたいなことを、何回か思った。
てか、普通に生活している人とか出てこない話だからなぁ……すごく浮世離れしているんですよね。
隔離された集団みたいなのにリアリティを感じさせたいと思ったら、もっとこう、日常を丁寧に書いてくれればよかったのに。人間が生活しているんだから、お金も物も、人の出入りもあるはずだしさ、そんなに簡単に、謎の集団とか存在させられるかな? 公安とかも、まるでMIBですよ(笑) 組織なのに、ふたりだけでいろいろ画策してるとかありえないじゃん。。。

とまあ、読んでいる間も読み終わってからも「?」が多い作品でした。意欲作、なんだろうけどなぁ……ピンとこなかったなぁ……。
いや、なんか悪くばかりいってもうしわけないんだけど、なんていうの、期待が大きかった分アレだったっていう……私が興味を持っているようなジャンルとガッツリ要素が重なっていたので、余計、こう、「……アレ?」てなってしまいました。

同じような素材を扱った話なら、森恒二の「デストロイ アンド レボリューション」のほうがよくできていると思う……超能力を持ったテロリストという、とってもマンガ向きのお話ですが、描かれている問題意識みたいなのは、同じじゃないかと思います。

うーん、せめて文庫で読めばよかった。ハリーポッターより分厚いハードカバーって、ちょっと考えてほしいよな_| ̄|○。