腐印注意

腐印の 映画 アニメ BL 雑記。おもにネタバレありです。

「戦場のメリークリスマス」

を急にみたくなって、DVDを見ました。
いや、話題になった当時、テレビで見ているのだけれども、なにがなんだかよくわからない、しかし、とにかくD・ボウイと坂本龍一のキスシーン(ほっぺただけど)が怪しすぎて、そこしか印象に残らなかった、という、でも、そういう人はけっこう多いと思うんです。
音楽はね、あまりにも有名、私も、ピアノで演奏されるこの曲をよく聴くんだが、うーん、かんじんの映画のほうがほぼ記憶に残ってない。そのままずいぶん長い時が流れてしまったのですが、先日、これの原作にあたるローレンス・バン・デル・ポストの「影の獄にて」という本を読んだらですね、これが意外なほど面白くて、いや、けっこう昔の小説だし、言い回しがね、美麗なので、読みすすむのに時間がかかるし、描写の部分は、もうしわけないけどトバし読みはしてしまったんだが、それでも、核心の部分には、すごく納得できたというか、うん、泣かされる話でした。
バン・デル・ポスト自身が日本に来たこともあり、実際、第二次世界大戦のとき収容所にいたこともあるそうなので、そういう点で、興味がわくというのもあるんですが、それ以上に、南アフリカで育って西洋的な感覚を身につけた人が、日本とか、日本人とかを描写する、その見方というか、切り取り方がね、すごく新鮮でしたね。正直、ちょっと美化しすぎなんじゃないの、という風に思うところもある反面、すごくよくわかってるな、とか、逆に、自分が日本に住んでいると、気づけないようなことも書いてあって、「えー、こんな風にみえるのー」という、驚きもありました。
はっきりいって、いまの時代の日本人からみたら、たけしの演じるハラとか、坂本龍一の演じていたヨノイとかのほうが外国人ぽいというか(笑) むしろ、ロレンスとかの考え方のほうがなじみやすいし、なんでロレンスがハラを好きなのか、原作を読んでいても納得できなかったりもしたんだけど、しかし、それでも、日本に独特の死生観みたいなのは、いまでもあまり変わっていないな、みたいな、そういうところは時代が変わってもわかるので、こう、西洋と東洋のあいだにはさまれるロレンスの感覚は、かえっていまの時代の日本人のほうがよくわかるんじゃないかなぁと。
それだけでなく、このバン・デル・ポストという人は、よっぽど懐の広い、もののわかった人なんだろうなと。だってね、実際、自分がこんな経験していたら、もっとこう、悲惨で残酷な描写にもなりそうな気がするんだけど、それがこう、昔話風というか、個々のできごとだけでなく、その奥にあるものを見ようとしている感じ?
「ハラは神話を生きているんだ」というんだけど、いやぁ……そうなんだ、と。神話を生きるってどういうことかしら、と私いまでもそこのところはよくわからないんですが、とにかく、ロレンスはハラを尊敬していて、そして、ハラもやっぱり、ロレンスのことが好きだという、あの奇妙な友情のかたちには、やっぱり惹かれますね。
原作だと、ヨノイがセリアズを好きなのは、同性愛的な感じというよりはもっとこう、自分が理想としている男の姿をセリアズにみているというか、一見正反対で不可解な分、惹かれずにいられないみたいな、わりと精神的な感じがもうすこし強かったので、映画はね、なんかもう、見た目があまりに華麗すぎて、狙いすぎで、またそれが成功しているよなっていう、だから、それが大島渚の味なんだろうからいいと思うんですけど、でもな……その分、逆にちょっとわかりにくくなっているかな、という気もしました。
さすがに小説は、もっと丁寧にキャクターの背景とか、そのときの心情とかを細かくかいているので、映画で受ける印象よりも、もっとずっと普通にいい話というか、深い話でしたけど、映画はなぁ(笑) やっぱりあれだけ見ちゃうと、なんかエキセントリックというか、奇抜なところが目立ってしまって、原作のよさは伝わっていないかも、という気はします。
ただ、このたび、原作を読んでから見返してみたら、映画は映画として、独立して面白いというか、西洋人の目で見た日本の世界を、また日本人が解釈して見せる、っていう、そういう面白さがあるなぁと。いや、リアルな日本ではないですよ。いくらなんでも、戦争中の日本兵士があんな感じではなかっただろうとは私も思うので、いわゆるドキュメンタリーみたいなリアルじゃくて、もっとこう、ファンタジー的な日本ていうか、西洋の人が持っているファンタジーとしての東洋的なものをよそおいつつ、でも、その下には本当の日本ぽさみたいなのがちらっと見えているというか、まあ、そんな風な感じです。
しかし、できたらやっぱり、原作を読んでから映画はみたほうがいい気はしますねぇ……。
映画を見慣れている人でも、ちょっと難解な内容というか、うん……人を選ぶ感じします。

最初、ハラの役は勝新太郎に演じてもらうハズだった、というのも、なーるほどぉーと。悪くない感じします。兵隊やくざだ(笑) ハラって、やっぱ独特の愛敬のある人じゃないとダメだよなぁ。。。