「悪の教典」

ようやく見たんですよ、DVD。
おー、待ってました！　とばかりにウキウキと。ウキウキと見始めたんだが、だが、うーん……。うーーーん！！！
む、ムズカシイなー……。
これ、私、原作を先に読んでしまったので、どうしても、原作とくらべてしまうんだよな……。映画はね、やはり時間の制約があるので、細かい部分ははしょってメインの殺戮に焦点を絞らないといけない。それは、わかるんですけど、でもさ、結局この話の本当の怖さって、危険がそこにせまっているのにそれを認識できないってことと、そこにつけこむ蓮実というひとの“人でなし”加減なわけで、この怖さを強く感じるのってむしろ、暴力をふるっているところじゃなくて、ふるう前と後に、予感や余韻を感じさせないところなんじゃないかな、と思うと……なんだろうな、最後の大盤振る舞いの場面よりむしろ、日常と暴力が共存している前半の部分の方が恐ろしさは際立っているんですよね。
なので、そうだなー……この映画、14歳の蓮実が両親を殺害するところからはじまっているんですけど、むしろ、生徒の殺戮が終わったところから話をはじめて、殺戮をはじめるところで話が終わる、みたいな……あの、殺害場面にね、時間をつかわないほうがよかったんじゃないかな、と。そのぶん、もっと人間関係とか、生徒の描写に手間をかけてくれると、面白かったかもしれない。
　吹越満の釣井先生の異色なかっこよさとか山田孝之の体育教師の、なんだよ美形じゃん！　そして笑えるじゃん！　てとことか、おもしろい解釈だなーと思ったんですよね、映画。山田孝之がセクハラって(笑)　される側のまちがいじゃないの(笑)　ドラムかっちょよく叩いたり、こづかいくれたり、はっきりいって、蓮実より全然人気者の要素ありです。大変身。釣井先生も、私、原作でもうすこしライバルっぽく蓮実と戦うのかと思っていたら意外とあっさり倒されたので、せっかくのキャラがもったいねーという気がしていたので、そのへんは、映画の方がおもしろかったから、よけいに思うんですけど。。。
なんだろうな、暴力のシーンって、こう、見る時間の長さと反比例して怖さが減っていくんですよね。慣れてしまうし、それに、あの文化祭のセットとか、音楽のなるタイミングとか、蓮実のキャラが映画っぽく作りこまれすぎてて、やはり怖さが半減。目で見る暴力のシーンの怖さって、瞬発力という気がするので、私はむしろ、黒沢清の「CURE」のオチとか、「ドッペルゲンガー」のユースケの殺害シーンみたいな、一瞬のできごとのほうが怖さ倍増という、どきっとさせるのって、映像では大事じゃないですか。それがな……あんまりないんだよな……。
見るまで知らなかったんだけど、これ、監督　三池崇史なんですね。じゃあ、このあざとさは仕方ないのか……とちょっとあきらめがはいったんだが(笑)　「十三人の刺客」のときも思ったんだよなー。前半面白かったのに、後半のアクションシーンのクドさと長さに辟易としちゃったんですよね。蓮実を演じた伊藤英明も、ちょっと、私はイメージがちがうんです。なんか、映画はわかりやすすぎるんだよな、なにもかもが(笑)

あとは、蓮実の家の中とかね、釣井先生を殺すときの手順とかね、このへん、もっと細かく丁寧に見せてくれたらよかったのにーとか。蓮実みたいな人は、散弾銃を撃つときより、準備や、後始末をするときの手際とか、仕草とかの方が、見せ方大事じゃん？
よくもわるくもＢ級の匂いがするよ三池崇史。
怖さでいったら、「黒い家」のほうが全然怖かった。
もしかすると、三池崇史は、この話を怖い話と思ってないのかもしれないですね。むしろ、蓮実を面白い人と思っちゃってるのかなー。だとしたら、やっぱり、伊藤英明じゃないほうがよかったんじゃないかと思う。誰も知らないような、役者の人を使った方がもすこしリアリティがあったかも……。伊藤英明、男っぽい色気もあるし、がんばってたとは思うんだけど、なんか、ぎこちないヨ！　最後の腰縄つけながら踊るシーンとかもさー、板にハマッてない気がしちゃいました。いや、でも、これは伊藤英明のせいではないかもしれません。日本人には合わない演出、という気が、全体にしちゃうんだよな。となると、やっぱ監督の色が＿｜￣｜○。監督が合ってないのか、という(笑)

まあ、私がいろいろひっかかりを感じてしまうのって、この作品を素直にエンタメとして楽しめてないところにあるのかもしれないです。なんかな、ミステリーの枠とかいうより、実録！　とかの枠で見ちゃってるんだな。なのでつい、デヴィッド・フィンチャーとかさ、若松孝二とかの、ずしっとおなかに響く感じの撮り方してほしいんだよ、となってしまうのかも……。
なので、フツーにエンタメとして楽しむ気持ちなら、面白い映画なのかもしれません。たんに私が三池崇史合わないだけかもしれない(笑)

どうでもいいですが、私が原作で一番怖かったシーンは、蓮実の元カノを襲った工場の先輩の死にざまです。まあね、あれは映像にできないとは思うよ……小説版だけのおたのしみ＿｜￣｜○。